自然・農・多世代の関わり-地域の営みを次世代へ継ぐ「Dream Eggs ゆめたま」

ゆめたまの活動拠点の田んぼ

横浜市随一の農耕地面積を誇る(※1)泉区。その南部の下和泉周辺で、環境コンサルタントでありビオトープ管理士の相川健志さん(41)が代表を務めるNPO法人Dream Eggs ゆめたま(以下、ゆめたま)は、「生態系の保全・復元」「環境教育」「伝統文化の保存・継承」を三本柱とした活動を行っています。2018年10月13日と14日の2日間に行われた米作り体験の「稲刈り」の様子とともに、その活動内容を紹介します。

豊かな環境や地域の営みを次世代へ

代表の相川健志さん

下和泉には現在でも、田んぼや畑・雑木林・湧水など里山の原風景が点在しています。ゆめたまは、相川さん自身が幼少期に「思いきり遊んだ」というその豊かな自然環境と、地域で続けられてきた営みを次世代へつないでいくことを目的に、2010年に活動を始めました。約1,500平方メートルの田んぼでの農作業や生きもの観察、竹細工など、環境教育や伝統文化体験のプログラムを開催しています。相川さんを中心に、大学生インターンや高校生ボランティアのスタッフが活動を支えています。

親子で一緒に米作り

お母さんと一緒に「はざ架け」

今回取材した米作り体験は、田植えや稲刈り、餅つきまでの年間プログラムで、未就学児や小学生、保護者などの家族連れを中心に、各日20人~50人前後の参加があります(2015年度、2016年度事業報告書より)。横浜市内や藤沢市・大和市など、県内からの参加の他、東京都など県外からの参加もみられます。
取材日の2018年10月13日の稲刈り体験では「カマで刈る」「刈り取ったものを束ねる」「日干しにするために『はざ』と呼ばれる竿へ掛ける」などの一連の作業を行いました。
稲の間に身を屈め、手や体を使う作業に皆、集中します。やわらかい土に足をとられて歓声があがったり、スタッフから「茶碗1杯分のご飯は何粒くらい?」というクイズが出題されたり、参加者はなごやかな雰囲気の中、農作業を楽しんでいました。

田んぼは生き物の宝庫

稲の根元に生きものたちを発見

ゆめたまが手がける田んぼは、多種類の生きものが暮らす身近な「ビオトープ」(生物生息空間)です。米を最優先種とし、農薬を使わず、人間にとっての「害虫」も、他の生きものを抑制する存在として排除しない方針です。トンボなどの水生昆虫、水を引いた田に産卵にくるカエル類、田起こし後に小動物をついばむサギなどの野鳥、そしてコウモリやヘビなど、様々な営みがみられます。

6月の田植えに引き続き、稲刈りにも参加した3才と6才の子どもたちはカエルやバッタなどを次々と見つけます。母親の駒津直美さんは「田んぼ作業や生きもの観察は、横浜ではあまり体験できないのでよい機会となっています」と話していました。

子どもたちは決められたプログラムをこなすのではなく、自ずと遊びを生み出し、思いっきり遊ぶ。大学生インターンや高校生ボランティアは「近所のお兄さん・お姉さん」のような存在として子どもたちの面倒をみる。一方通行の教育ではなく、遊びや子ども同士のやりとりを通して学んでいく。ゆめたまの環境教育では、そんな学び方を重視しています。

サポートスタッフとして地域と関わる

土にまみれて遊び、互いに関わりながら成長する子どもたち

高校生ボランティアの加藤優也(まさや)さんと重松玄記(げんき)さんは活動中に子どもたちをまとめ、魚類や水生生物の調査を手伝うなど、心強いサポートスタッフです。

活動について加藤さんは「子どもたちと話すことが楽しく、その元気さに圧倒されます。ゆめたまに関わる地域の大人たちは面白いなあ、と思う人が多いです」と話します。重松さんは「いろんな人とつながりが作れたことと、自身の人見知りを克服できたことが一番良かったです」と話します。小学生のころ、観察会の参加者だった2人は現在、ゆめたまのサポートスタッフとなり、地元の自然や農地、地域の人たちとの関わりをさらに深めています。

環境教育の質的な成果はすぐに表れてくるものではありませんが「子どもたちの成長した姿は、これまでのゆめたまの活動の大きな成果です」と相川さんは話します。

大人の姿に学ぶ

高校生や大学生のボランティアは農作業を通して仕事への姿勢も学ぶ

近所から稲刈り作業のサポートにきていた進藤和雄さん(78歳)は秋田県出身で、幼少時から農作業をしていたため田んぼがなつかしく、作業の手伝いをするようになったそうです。そして春の田起こしから冬の作業まで季節を通して3年間、通い続けています。「先々を考え、丁寧に作業をする。そんな進藤さんと学生たちが一緒に仕事をする場が大切です。全体やほかの人の動きを見て自分がどう動けばよいか、ということを学んで欲しい」と相川さんは話します。地域の大人の姿勢を見て若者が成長する場、ゆめたまの田んぼはそんな役割も担っています。

いつまでもこの風景を

横浜市でも農業、とりわけ稲作農家の後継者不足や田の耕作放棄などが懸念されています(※2、3)。「将来、田んぼのあるこの風景がなくなってしまう。それは時代の流れなのかもしれません。でもせめて今、身近な場所で行われていることについて、多くの方に知ってほしい」と相川さんは話します。 自然、農、多世代の関わりが息づくゆめたまの活動に、ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか。

(※1)「2015農林業センサス 結果報告 統計表/経営耕地の状況」(神奈川県)http://www.pref.kanagawa.jp/docs/x6z/tc50/nousen/nousen2015.html 

(※2)「2015農林業センサス 結果報告 統計表/結果の概要」 (横浜市) http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/census/nocen1502/

(※3)「横浜の緑に関する土地所有者意識調査/『土地所有者意識調査 』 結果 」 (横浜市/平成29年)http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/data/midori-chousa/midorichousa2017.html

イベント参加、支援等について

ゆめたまは、田んぼ体験や生き物観察会への参加、学生や社会人のボランティアを随時募集しています。寄付も受け付けていますが、まずはイベント等に参加し、活動に協賛していただきたいとのことでした。
田んぼ体験の「田植え」は毎年6月初旬、「稲刈り」は10月中旬に開催され、参加費は各回300円。「餅つき」は1月中旬に行われ、参加費は無料(餅の代金は別途)。最新の開催情報や、参加方法について詳しくは、Facebookページを参照。
Facebook:https://www.facebook.com/NPO.Dream.eggs.Yumetama/

寄付・活動についてのお問い合わせ

NPO法人Dream eggs ゆめたま
〒245-0021  神奈川県横浜市泉区下和泉
HP:http://www.yumetama.or.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/NPO.Dream.eggs.Yumetama/

(取材・文:望月藤子)

望月藤子 プロフィール

神奈川県内の自然公園や都市公園で自然解説員として14年間勤務。自然(森、水、野生生物など)とともにある暮らし・地域とのつながり・受け継がれていくものなどについて記していきたいです。