周囲と自身の意識や視点に改革を! 障害があっても社会の大切な一員であること・NPO法人 小田原なぎさ会

共に活き活きと暮らせる社会に          

JR東海道線鴨宮駅から徒歩5分、人通りの多いコンビニエンスストアの2階にNPO法人小田原なぎさ会(神奈川県小田原市南鴨宮3-16-20)がある。

ここでは“精神に障害を持つ人も、誇りある社会の一員として、自立生活ができるようにする支援”を展開している。

つながりの木

メンバーさん、職員、役員の手形で作った 「つながりの木」

登録している「メンバーさん」(ここではでは精神に障害がある利用者を「メンバーさん」と呼んでいる)は32人(2016年11月現在)。電子部品加工やタオルセッティング等の日常作業をはじめ、習字やパソコン教室、月に1度の社会見学など社会との接点を保ちながら、就労を視野に入れ、活動している。

理事長の乾恒雄さんは「人と人のつながりを大切に」を活動の基本理念として、強い想いと意志を持って諸活動を推進している。商業地域に活動拠点を置いているのも、周囲や地域と関わりを深め社会との接点を持てる環境作りの一環である。

始まりと発展

理事長を務める以前の乾さんは、一般企業で製造技術分野を中心に多忙な日々を送っていた。日頃から「会社組織だけでなくより広い領域でも何か自分に出来ることはないか」という想いがあった。30年以上勤めた会社を自らの意思で退職し、ボランティア活動などをしていく中で偶然にも小田原なぎさ会を訪れることになる。

作業所は広いスペースと休憩場所を確保した明るい環境。その人なりのペースで活動している。

活動の主軸となっている小田原なぎさ作業所は1999年に当事者を抱える家族会の手で設立され、その後2011年にNPO法人小田原なぎさ会へ移管された。この施設運営事業をベースとしながらも、今後ますます大切になっていくと捉えている普及啓発事業や関連機関との連携事業にも力を注いでいる。

創立10周年を迎えた2016年9月には、広く市民から支持を得ている等の基準を満たしていることを所轄庁から認定され、“認定NPO法人”に。企業への働きかけや地域とのネットワークを大切にし、「内向き」から「外向き」 の活動へ、守りから発展へと大きく舵を切っている。

心で聴く 音楽の素晴らしさに触れて

2016年10月25日、市内の障害者施設を対象にしたイベント「楽しい音楽会」が川東タウンセンターマロニエ(小田原市中里)で開催された。

小田原市障害者事業所連絡会が主催しているこのイベントは音楽を通して参加者が心を穏やかに保ち、関連施設との交流を深めることを目的としている。関連機関との連携事業の一つとして、小田原なぎさ会からもメンバーさんや職員18人が参加し、音楽ユニットZARDの「負けないで」を合唱した。会場には100人ほどの利用者やその家族が集まり、ともに口ずさみながら日頃の練習成果を温かく見守っていた。

特別出演したプロの演奏グループのフルートやオーボエの演奏には、会場にいる全ての人がその音楽の素晴らしさに魅了されていた。

「以前は出番まで緊張したけれど、今回は一番バッターだったので、他の施設の発表をゆっくり聞けた。自分が提案した『負けないで』を皆で歌えて嬉しかった」とメンバーさんは満足そうだった。

ストレスの多い現代社会においては多くの人が心の病を抱えている。外見では分かりにくい病気であり、精神疾患は決して特別な病気ではない。

「病気の発症から20年以上、たくさんの方々に助けられ、励まされ、今日までやって来られました。体調の良い時と悪い時の繰り返しではありますが、皆様と一緒に作業をしたり、イベントに参加したりと、毎日を楽しく過ごさせていただいております」と、メンバーさんの母親は今までを振り返った。

未来に向けて 手を取り合って

日頃の感謝をこめて、メンバーさんから小田原なぎさ会へ贈られた世界にたった一つの手作りの表彰状。

世界各国にも同様の精神病患や障害を持つ方はいる。乾さんはカンボジアやマダガスカル等の発展途上国をはじめ世界各国に滞在し、その体験をメンバーさん達に伝えている。

その話を心待ちにしているメンバーさん達は、最近では出発前に見てきてほしい場所をリクエストするようになったとか。

「『 病気が治る』のでなく、 『前より良くなっている』 という表現がいい。何でもチャレンジすることを繰り返し、常に前向きでいる。これが良い循環になっていってほしい」と温かな表情で乾さんは話した。

年に数人は社会復帰して就労し、休日には仕事での出来事を乾さんに話にくる。

時代背景や取り巻く環境の変化をしっかりキャッチし、進むべき方向に勇気をもってチャレンジしていく乾さん、これからのNPO法人小田原なぎさ会とメンバーさん達を更に明るくしていく。

(取材・文:野地静香)

寄附・活動についてのお問合せ

乾恒雄氏

家族会による作業所運営時代の初代理事長から熱意ある依頼を受け、5年前に理事長を引継いだ乾恒雄(いぬい・つねお)さん

認定NPO法人 神奈川県・小田原市指定NPO法人 小田原なぎさ会

〒250-0875 神奈川県小田原市南鴨宮3-16-20
Tel/Fax 0465-47-4513
E-mail:o-nagisa@nifty.com
http://odawaranagisa.life.coocan.jp/

野地 静香(のぢ しずか)プロフィール

1982年神奈川県生まれ。就職後、仕事をしていく中で、相手の立場を考えて話すことの大切さを感じるようになり、休日を利用して東京アナウンスアカデミーに通い始める。卒業後はケーブルテレビの市民リポーターとして、地域に関わりながらさまざまな情報を伝えてきた。主婦となり、母親となった今、新たな視点で神奈川県の更なる活性化と、より広く情報を伝えて行くことを目標としている。