映像と音楽で国際理解と平和を「自分ごと」に  「地球のステージ」

地球のステージ公演中の様子 (写真提供:認定NPO法人 地球のステージ)

国内外で医療支援・心のケア・就学支援をしながら、そこでの実状を伝える公演活動「地球のステージ」を全国で展開しているのが、認定NPO法人地球のステージです。団体名と同じ名前の公演は、映像と音楽を交えながら「平和の第一歩はまず自分の周りの平和を創ることから」というコンセプトで制作されています。今回は、全国各地で開催している「地球のステージ」が始まったきっかけや現在の活動について、同法人に話を聞きました。

「世界で起きていることを伝える必要がある」

フィリピンで出会った少女ロエナスさん(中央)
(写真提供:認定NPO法人地球のステージ)

地球のステージの代表で心療内科医の桑山紀彦さんは、これまで海外で医療支援に数多く携わってきました。

きっかけは1987年、フィリピンでのある少女との出会いでした。当時24歳の桑山さんは、医師となって4カ月目の夏休みに観光でフィリピンの首都マニラを訪れます。そこで、物乞いをしていた少女ロエナスさんへ、お金ではなく風船をあげたことをきっかけに家に招待されました。彼女の家には、目の病気を患っていた彼女の祖母がいました。

目の症状はひどく、何の医療用具も持ち合わせていなかった桑山さんでしたが、おばあさんの目やにを拭き取り、何気なく自分用に持っていた新しい目薬を1つ渡しました。すると、おばあさんは桑山さんに繰り返し「ありがとう、ありがとう」と言いながら涙を流したのです。

ボランティア活動に無関心だった桑山さんにとって、貧しいがために医療を受けられない人に関わったことは、衝撃的な体験でした。それまで「ボランティア活動は正直面倒くさい」と思っていた自分を見直すきっかけとなったそうです。

3日後、気づきを与えてくれたお礼を言おうと、ロエナスさんの家に向かったものの、一家は引っ越してしまっていて、誰にも会えませんでした。この経験を契機に、桑山さんは医療支援活動へ積極的に参加するようになり、「気づきを与えてくれたロエナスさん一家への恩返しの意味も込めて、自身が見てきた世界を伝える活動を始めた」と言います。

その後、1991年設立の国際協力NGO「認定NPO法人IVY(アイビー)」創設に関わり、「多くの人にこのような海外の状況を知ってもらいたい」という思いから、IVYで自分が支援活動に取り組むようになったきっかけや海外での体験談を講演会で発信していました。講演会は「地球のステージ」コンサート事業へ発展し、2002年にIVYの1事業部門から独立。同年NPO法人として地球のステージを起ち上げ、自身の心療内科クリニックを運営しながら、医療支援活動と公演活動を行っています。

医療支援活動と共に始めた「伝える活動」で独立
認定NPO法人「地球のステージ」桑山紀彦代表(写真右)
(写真提供:認定NPO法人地球のステージ)

地球のステージ公演を体験してみよう

地球のステージ公演中の桑山紀彦さん (写真提供:認定NPO法人 地球のステージ)

同法人が展開している事業は、「地球のステージ」公演・東ティモールの医療支援・パレスチナでの心のケア・ミャンマーの子どもたちへの就学支援・津波復興祈念資料館「閖上(ゆりあげ)の記憶(※)」を運営する東日本大震災復興支援事業の5つです。今回は看板事業である「地球のステージ」について紹介します。

2018年12月2日、千葉県松戸市で「地球のステージ(平和の集い)」が開催されました。松戸市が毎年開催している「平和の集い」。その核となるプログラムとして「地球のステージ」は上演されています。

今回の内容は、支援活動を通して桑山さんが感じた世界や東日本大震災を題材に『いのち』を見つめるものでした。映像と話が10分、歌5分を繰り返す構成で、そわそわしてどこか他人ごとだった参加者も、だんだん集中して引き込まれ自分ごととして考えるようになっていきました。終演後、桑山さんや周囲の人と話すことで思いを共有して、1人ひとりがそれぞれの平和を考えるようになります。

地球のステージが現在提供できる演目は「国境を越えて」「果てなき回帰」など7種類。内容は、現地の状況が絶えず変化しているため、常に更新され、どの演目を観ても、現状への理解が深まるようになっているのが特徴です。

最初は普通の講演会をしていた桑山さんですが「本当に伝えたいことが伝わっているのだろうか?」と疑問に思い、試行錯誤を重ね、映画の構成をヒントに映像と音と語りを融合させた現在のステージ構成に行き着きました。また、「地球のステージ」という公演名には、1人ひとりの人生を舞台に例え「地球上では毎日たくさんのステージが行われている」という意味が込められています。

公演は、各地の実行委員会による年間5回の自主企画のほか、学校や自治体、国際交流関係団体などが主催者となる形での公演など、全国各地で年間150回ほど開催しています。2019年3月までの公演回数はのべ3,757回です。すべての人に「心で感じるステージを体験してもらうことで、国際理解を深め、自分の周りの平和について考える機会になれば」と、桑山さんは使命感を持って続けています。

誰でもできる!「地球のステージ」の開催

地球のステージ公演担当で、同法人海老名本部の石橋優子さん(写真:小澤貴恵)

地球のステージの公演を見た参加者の中には「今度は自分で主催したい」と申し出る人がいるそうです。地球のステージ公演は誰でも開催することができ、さまざまな団体や個人が主催することが地球のステージの応援につながっています。そのほか、寄付や会員になっての支援も積極的に募っています。

地球のステージが目指す究極の未来は「世界平和」。団体ができることは微力で、戦争を止めることはできません。でも、1人ひとりの優しさや心の強さで、自分の平和を守ることができるという信念に基づいて、地球のステージはこれからも公演を続けていきます。

※閖上の記憶(津波復興祈念資料館)
https://tsunami-memorial.org

(取材/文:小澤貴恵)

寄付・ボランティアのお問い合わせ

認定特定非営利活動法人 地球のステージ
(海老名本部事務所)
〒243-0436 神奈川県海老名市扇町7-7 2階
TEL 046-204-9241 / FAX 046-204-9243 (受付時間 平日10:00~18:00)
e-mail stageone@e-stageone.org
URL http://e-stageone.org/

小澤貴恵 プロフィール

神奈川県生まれ、神奈川県育ちで、地元が大好き。救援活動でNPO法人という言葉は聞いたことがあってもくわしく知らなかった私が、地元で頑張っている団体を応援する気持ちで記事を執筆しました。