シニアに「居場所」を提供し、シニアの「出番」を作り出す「湘南ふじさわシニアネット(SFS)」

「退職したのはいいけれど、家にいても厄介者扱いされるし、外に出てもやることがない…」そんな経験をしているシニアの方はいませんか?そんなあなたに、もしかしたら認定NPO法人湘南ふじさわシニアネット(以下、SFS)が応えてくれるかもしれません。

SFSのホームページを見ると、いかにも楽しそうな団体で、情報技術(IT)の活用を中心に幅広い活動をしているよう。「学びと楽しみがあり、仲間と交流できるのがSFSの特徴です」と語る、代表理事の小林信武さん(75)に、SFSの活動にかける思いと将来の展望などについて、お話をうかがいました。

藤沢駅近くの事務所で、熱く語る小林さん

「シニアの居場所」づくりが、設立のきっかけ

SFSは、地域で情報技術活用を推進する団体として、3人の創業者によって 2003年6月に設立され、翌年には「事業型NPO」を目指して本格的な活動を開始しました。設立のきっかけは、創業者の「シニアの居場所」を作りたいという思いからでした。

創業者の1人で設立当初の代表理事を務めた(故)二宮欣司さんは、会社をリタイアするときに「人は自分が何かによって支えられているという気持ちを持たない限り、不安になる」と感じ、会社の同僚とその友人を誘い、お互いに得意とするITを中心に活動するSFSを立ち上げました。

そして、藤沢市商店会連合会加盟店舗のホームページ更新の仕事を受託したところ、これが功を奏し、パソコン教育や経理のサポートなどへと仕事の幅をひろげ、今日に至っています。2018年8月現在、会員数は98人。事務所は、藤沢駅から徒歩3〜4分のところにあります。

SFSの「3つのミッション」とは?

「私たちが目指していることは3つある」と小林さんは言います。1つは、企業や組織をリタイアしたシニアの持つ知識・技術・経験を生かして、地域に貢献すること。もう1つは、シニアに居場所を提供して、社会との関わりの場として出番を作ること。「リタイアしたシニア世代にとって一番大切なのは、『居場所』があって自分が社会の役に立つという『出番』があることだ」と小林さんは強調します。地域社会に貢献するSFSの活動自体が、メンバーの居場所と出番づくりとなっていると言います。そしてもう1つが、働いて、学んで、楽しみながら仲間と交流して「生きがい」を感じること。この3つが、小林さんは「SFSの3つのミッション」だと言います。

「市域コミュニティ広場」を目指すポータルサイト

SFSには、ICT(情報コミュニケーション技術)に詳しいメンバーや、建築・機械に強いメンバーなど、多彩な顔ぶれが揃っています。メンバーは、ITの分野を中心に、健康・環境・防災など、10のワーキンググループを作り、地域の課題解決に向け活動しています。

なかでも現在取り組んでいる大きな事業として、「えのしま・ふじさわポータルサイト(えのぽ)」の運営があります。藤沢市を中心に湘南の暮らしに役立つ情報やイベントを、みんなで出し合い、利用し合う、藤沢の総合情報ポータルサイトです。もともとは藤沢市からの要請を受け、同市との協働事業として2007年に始まったものですが、その後SFSの自主運営事業としての性格も加え発信を続けています。

講師も受講者もわいわい意見交換する「わいわいデジタルサロン」

藤沢商工会館ミナパークでは、毎週木曜日に「わいわいデジタルサロン」という、SFS主催の市民向けの勉強会が開催されています。入会金1,000円、参加費1回1,000円で、誰でも参加できます。

iPadやiPhoneの使い方を学ぶ講座は、副代表理事の安岡伸さん(79)が担当です。iPhoneでYouTubeに動画をアップするための操作方法等を解説し、受講生が実際に手を動かす実践型のスタイルを重視しています。

「私のYouTubeの楽しみ方」と題する講義を行う安岡さん(中央)

初心者グループと上級者グループなど、経験や興味に応じて受講生を3〜4のグループに分け、操作の進捗や理解度を確認しながらきめ細かく指導するので、好評です。キーボードを打つのが苦手なシニアに対しては音声入力で操作する方法も伝授しています。

初心者グループにiPhoneやiPadの使い方を教えるメンバー(左端)と、それを見守る安岡さん(右端)

講師を務めるSFSメンバーも受講者も、情報機器を楽しく使いこなす技術を身につけることができ、とても生き生きとしていました。

上級者向けにiPhoneの使い方を大きな声で講義するメンバー(左端)

上級者向けにiPadの使い方を教えるメンバー(中央)

毎週土曜日にSFS事務所で行っているサロンでは、ワードやエクセルの使い方から、個別相談まで、パソコンに関する講座が開催されています。

メンバーによるメンバーのための活動〜同好会

10あるワーキンググループによる事業が縦軸とすると、横軸には「同好会」があります。同好会は、メンバーによるメンバーのための活動。旅行・スケッチ・ゴルフ・サイクリングなど12の会が動いています。

「メンバーがやりたいと思ったら、新しい同好会が生まれる」という仕組みになっていて、シニアに居場所と出番を提供していこうとするSFSの創設時からの思いが反映されています。会員は、多様な活動のどこかに自分の願いを位置付けることができる。意欲さえあれば自分自身で「居場所と出番」を創り出すことができる。SFSでは、そんな活動が展開されています。

寄付についての考え

以上のような活動をしていくうえで必要な資金はどのように調達しているのでしょうか。SFSの資金調達体制を聞きました。

SFSの資金調達体制(収入)は、事業売上、会費、寄付が3本柱となっているといいます。事業売上は、ワーキンググループが主体となって、行政や企業・団体、市民の方から受け取る収入で、会費は、会員から受け取る収入です。NPO法人の活動を維持していくには、会員からの会費や事業活動を通じて得る収入などで資金を確保していくほかに、外部からの寄付を募ることも必要となります。SFSも例外ではありません。

寄付については、「寄付を増やすべく寄付活動推進委員会を組織して積極的に活動しています」と小林さんは言います。しかし、SFSの活動は多岐にわたっていることと、直接的な対人支援事業を行っているわけではないことなどから、なかなか思うように寄付を受けられず、外部の方からの寄付は限られています。

では、SFSでは、この外部からの寄付に頼れないという問題にどのように対処しているのでしょうか。「会員に、内部からの寄付として、現金か、本などの不要品を提供していただくなどのお願いをしています」と、小林さんは言います。具体的には、本については、事務所に「ひまわり文庫」という棚を設置して、会員の読んだ本をその棚に寄付してもらい、その棚にある本を読みたい会員には若干の寄付をお願いして、その本を読んでもらっているとのこと。また、家庭で不要な本があれば、それをまとめてBOOK-OFFに出し、BOOK-OFFの寄付(10%)も含めてSFSへの寄付となるよう、BOOK-OFFと契約しているとのことでした。さらに、本も含め、不要品はフリーマーケットで販売し、その売り上げを寄付として扱っているとも。

進化していくNPOを目指して

IT事業から始まったSFSですが、今では健康や環境、防災にまで活動の幅を広げてきています。小林さんは、「時代の変化に合わせて変わっていかなければならない」と言います。「IT関係においても、パソコンだけではなく、タブレットやLINEにも活動の幅を広げていったように、地域貢献を核に、時代に即応した事業を展開していきたい。そのように進化していくNPOだと思っている」と語ってくれました。
(取材・文:横山豊久)

寄付・活動についてのお問い合わせ

認定NPO法人 湘南ふじさわシニアネット(SFS)

代表理事:小林信武
所在地:藤沢市藤沢496藤沢森井ビル6階604号(〒251-0052)
TEL:0466-52-5577
FAX:0466-52-5578
URL:http://www.sfs-net.com/
営業時間:月〜金曜日 10:00〜17:00(祝祭日を除く)

横山 豊久(よこやま とよひさ)プロフィール

生まれは千葉県市原市。乳ばなれしないうちに東京都千代田区へ転居。その後杉並区、新宿区、町田市、神奈川県川崎市などを転々とし、結婚して東京都台東区へ。現在はようやく神奈川県三浦市に治りました。定年退職後、神奈川新聞の姉妹紙「横須賀日日新聞」の市民記者としての取材活動の延長で、県の市民レポーターの活動にめぐり合いました。趣味は、映画鑑賞・読書・スケッチ・詩吟・尺八等々。

【取材後記】
「わいわいデジタルサロン」の講師を務めた安岡さんが、音声入力ソフトの「Siri」を使いこなし、キーボードを打つよりも早く操作しているのを目の前にして、「すごい」と感心させられました。この取材を通じて、小林代表理事が熱く語っていたSFSの将来に期待したいと感じました。