「ディスカバーブルー 」Life with the Ocean
〜いつまでもこの海と暮らしていくために〜

真鶴町を拠点に活動する、大学発ソーシャル・ベンチャーのNPO法人ディスカバーブルーは、2011年2月の設立以来、人と海との新しい関わり合いを作る取り組みを続けています。代表理事であり、環境学博士の水井涼太さんに活動への思いと、「いつまでもこの海と暮らしていくために」取り組んでいる事業についてお話を聞きました。

海の問題はだれのもの?
「人」と「海」との新しい関わり合いをつくる

日本列島は南北に長く、その周囲はすべて海に囲まれています。複雑な地形を持つ海岸線は約3万キロメートルもあり、世界で6番目の長さです。北は流氷が浮かぶ極寒の海から、南は世界有数のサンゴ礁まで。世界中をみても海の生物多様性が高い、豊かな海域のひとつです。

「素晴らしい海洋環境に恵まれているにもかかわらず、日本の学習指導要領では『海』について体系的に学べるような取扱いがされていません。理科や社会のなかで細切れに学ぶことはあっても、海を身近に感じながら、しっかりと学べる環境が少ないのが現状です」と、水井さんは語ります。

海をめぐっては、さまざまな分野で問題が存在します。近年でいえば、海洋プラスティックごみの問題や、水産資源の減少、漁業の衰退、鉱物資源に関する国家間の軋轢などが挙げられます。複雑で難しい問題ばかりで、ともすれば、他人事として目をそらしてしまいがちです。

海に関する教育機会や経験が少なく、誰もが語れる「海に関する共通言語」がないことが、海の諸問題を「他人事」にしやすくしていると水井さんは考えています。そこで、ディスカバーブルーでは、多くの人が海に興味を持ち、自分事として捉え直すきっかけ作りとして、市民、自治体、企業、分け隔てなく対象にさまざまなイベントを開催しています。
水井さんは、「海に興味が無い、他人事と考えている人も含め、多くの人が海とつながることが、問題解決への糸口になると考えている」と言います。

海に興味をもつこと
当り前の行動が変われば海も変わる

ディスカバーブルーは、横浜国立大学発のソーシャル・ベンチャーです。事業として収益を上げながら社会課題を解決していくソーシャル・ベンチャーとして、学術知識に基づいた質の高いサービスを自主事業として開催しています。市民は気軽に参加できるイベント等を通じて、海や海の生態系に関する良質な知識を学ぶことができます。

幼児から大人まで誰でも参加できる一般向けのイベントでは、海のプランクトンや磯の生物の観察会、水中映像上映会のほか、夏休みには自由研究のサポート講座などを、神奈川県内を中心に開催しています。「人」と「海」をつなぐ架け橋となるこの事業は、7年間で約26,000名(2017年度末現在)の人が参加しています。

水井さんは生物観察会などの参加型のイベントは、開催後も見据えた、大切な活動の1つと考えています。「参加した人たちが、その日に感じたことをきっかけに、日常の行動を変えていくことを期待しています。『ゴミを持ち帰る』『油を海に流さない』など当り前に言われ過ぎていても、出来ていないことをやれるようになるなど、当たり前の行動が変われば、海も変わっていきます。」

活動拠点の真鶴では地元の児童向けイベントの「真鶴自然こどもクラブ」を開催するほか、自治体職員を対象に真鶴の生態系や、海の自然を生かした町づくりについての研修も行っています。
また、2011~2012年度「神奈川県新しい公共の場づくりのためのモデル事業」に認定された「Life with the Ocean まなづる」プロジェクトでは、真鶴町立遠藤貝類博物館と協力して、「海の生物観察ガイド」を作成しました。このガイドは、今でも年間約2,000人訪れる観察会の参加者に配布され、市民と海とを繋げています。

「人」と「海」をつなげることから、さらには「町」と「海」をつなぐ。海の自然を生かしたまちづくりや、地域活性化の一端を担うことで、海と人とが創り上げてきた豊かな営みのある暮らしが、いつまでも続けられるよう活動の枠を広げています。

未来へむけて
海は『守るべき遠くの何か』ではなく『守るべき自分たちのもの』

神奈川県は、東京湾と相模湾という二つの異なる特徴を持つ湾に囲まれ、市民と海との関わり合いが深い地域です。日ごろ地元の海産物を味わうだけでなく、週末にマリンスポーツを楽しむ人や、特別に海に関する趣味がなくても海岸線を散歩するなど、多くの市民が海のある生活を享受しています。

海の諸問題を解決するための最初の課題は、行政、産業、学術研究、市民の連携がほとんどないことです。立場や組織を超えた協力体制の必要性を感じている水井さんは、市民の海を思う気持ちを活用した『海のモニタリングネットワーク』を構築したいと考えています。
例えば、一般の人が普段の散歩やマリンスポーツ等で見かけた海洋生物の情報を科学的データに反映できたり、「こんな生物が打ちあがっているけど、大丈夫?」といった海の環境や生態系をモニターできたりするなど、海を見守るネットワークには多くの利点が挙げられます。

海のことに興味と関心を持つ人が増えれば、市民参加型のモニタリングネットワーク構築へ向けて大きな原動力となります。水井さんは私たちへのメッセージとして「より多くのみなさんに海に興味を持ってもらいたいのですが、観察会やエコツアー的なイベント等は認知度があまり高くなく、事業的にはギリギリなのが実情です。直接的間接的にもご支援をいただければ幸いですが、イベント開催だけでなく、企業・団体への研修等も行なっていますので、海の生物を知る機会を積極的に利用してください。まずは神奈川の海の自然を沢山の人が実感し、関心を持つことで世の中の動きも変わってきます」と語ってくれました。

海は地球の気候をつかさどるシステムのひとつです。海を『守るべき遠くの何か』ではなく『守るべき自分たちのもの』として捉えなおすこと。ディスカバーブルーは活動を通じて、私たちに海との接し方を改めて考え、行動を変えるきっかけを作り続けています。

寄付・ボランティアのお問合せ

活動に参加するには
ディスカバーブルーでは、年間を通じて海洋生態系を学ぶイベントを開催しています。
最新の開催情報や、参加方法について詳しくは、団体HPまたはFacebookページをご参照ください。

特定非営利活動法人ディスカバーブルー

神奈川県中郡二宮町二宮96-4
TEL: 050-3657-2664
Email: info@discoverblue.org
URL: http://discoverblue.org/
Facebook:https://www.facebook.com/discoverblue.jp/

水島 綾子 プロフィール

横浜生まれ、横須賀育ち。幼少期より「海(磯)」に親しむ。2017年より「海」をテーマに神奈川県の市民レポーター活動を始める。