ミューズの神様に捧げるアンサンブルを楽しもう!

NPO法人 湘南フィルハーモニー管弦楽団

NPO法人「湘南フィルハーモニー管弦楽団」は、茅ヶ崎市を拠点とするアマチュアの管弦楽団です。今回は練習会を訪問し、理事長である佐藤正也さんや楽団員の方々に活動を通じた思い、継続する理由をうかがいました。

主な活動

「湘南フィルハーモニー管弦楽団」は、1977年、佐藤さんを含む、神奈川県立茅ヶ崎高校の6人の教師で立ち上げた「CAG」(Chigasaki Amateur Group)を出発点として発足しました。2017年に、創立40周年を迎えました。

現在は、茅ヶ崎市で月2回の練習を重ね、年1回のコンサートを開催しています。また、コンサートに足を運ぶことが難しい方々を対象に、年に2〜3回、ケアセンターなどを訪問して素敵な演奏をプレゼントするなど、様々な形でクラシック音楽を地域の人々に届けています。

活動は「音楽を届ける」だけに留まらず、市民に楽器を演奏する機会も提供しています。プロの指導者による「バイオリン教室」を開催するなど、生涯にわたって音楽を学ぶ場を増やすことにも取り組んでいます。この教室で演奏する楽しさを知った人が楽団に加わることもでき、現在の楽団員のうち、教室出身者は20人を超えているそうです。

また、コンサートの売り上げは日本補助犬協会や神奈川県立高校へ全額寄付しており「地域に音楽を届ける・演奏する楽しみを育む」といった芸術の振興に寄与するという活動だけでなく、社会貢献にも取り組んでいます。

音を奏でる喜びと演奏家としての責任

活動の最大のイベントは年に1回のコンサートです。入場料は500円。有償とすることで、団員は観客の前で演奏する気持ちの良さに加え、聴衆を楽しませる演奏を提供する「責任」を負うことになります。

地域の観客にとっては、身近な場所で行われる「ワンコインコンサート」なので、家族そろって気軽にクラシック音楽に接することができます。さらに支払った入場料が寄付に充てられることから、観客はお金を払う際に、社会貢献することができます。

コンサート入場料を有償とすることで、送り手と聴き手の双方によい緊張感が生じます。それが各々のコンサートを楽しむ気持ちを高め、その時間を共有する喜びを生むのです。

佐藤さんは「以前は集客に苦労しましたが、この数年、客席はほぼ満席が続いています。大雪が降ってしまった年でも1,000人を超えるお客様が来て下さいました。私たちの取り組みがかなりお客様に浸透してきたのではないでしょうか」と手ごたえを感じつつあるようです。

日本のプロフェッショナル・オーケストラの1回あたりの動員数は約1,080人(2015年度、日本オーケストラ連盟調べの総公演回数、総来場者数から算出)、アマチュアである湘南フィルハーモニー管弦楽団の動員数が、プロのオーケストラに近い値であることが佐藤さんの言葉を裏付けています。

長続きの秘訣

練習会は、月に2回、日曜日の午後と決まっています。これまでの経験上、回数をこれより増やすと団員の参加が難しくなり、減らすとコンサートを開催するには練習量が足りなくなるため、うまくいかないそうです。

練習会の回数と曜日を固定することで、団員は家庭や仕事などの調整がし易くなり、影響を最小限にして練習に参加し続けられます。

矢田智子さんは「家庭の中がうまくいく。休みの夜に出かけるとなると家族から『どういうことだ』と言われてしまうこともあると思うが、そういうことがなく参加できている」と話され、帯金恭子さんは「以前、もっと活動したくて別のオーケストラにも入ったことがあるが、土曜日の予定を空けることができなかった。やっぱりここが居心地いい」と言います。こうした話からも、団員の方々が練習に無理なく参加できることを実感しているのがよく伝わってきました。

音楽に真摯に向き合う姿勢

取材に訪れた日は、2017年11月初旬の練習会でした。会場は初めて利用する茅ヶ崎市勤労会館。顔をあわせるのが2週間ぶりということもあり、団員同士が「久しぶり」と切り出して話を始め、会場の利用方法などを確認しながら和気あいあいと練習の準備を進めています。

開始時間になったら、指揮者の合図で一瞬の静寂の後、練習がスタート。上手く演奏に入っていけない人、遅れて会場に到着する人、練習の開始直後は少し落ち着かない様子でした。

時間が経つにつれ、指揮者にも熱が入ります。パート毎に分かり易く指示を出し、その指示に団員は何度も頷いています。譜面にメモを書き込む人、他のパートの演奏の間にストレッチする人、それぞれのやり方で「準備運動」を進めながら、徐々にアンサンブルが整ってきます。全員が穏やかに、それでも一生懸命に集中していて、優しい中にも緊張感ある時空が作り出されていました。

練習後の団員のみなさんは充実感があふれた表情です。ファゴットの森祥子さんは「ここにくると何もかも忘れてリセットできます。楽しいからまた頑張れる。アンサンブルが整った時が気持ちいい」と活動の魅力を口にしていました。

佐藤さんは「近隣のアマチュア楽団では一番下手くそだけど、近隣で一番お客様が入る。『聴いてもらってありがとう』という感謝の気持ちと、一生懸命に演奏することが伝わっているのだと思う。クラシックはもともと西洋の音楽、私たちの活動のいいところを真似してもらって、こういう楽団が増え、結果としてもっと優しい日本になってほしいと願っています」と、音楽を楽しむ人たちを増やしたいという活動の根本にある思いを話していました。

また、団員に求める姿勢や目指す先について、佐藤さんは、「美しい音楽を演奏するのだから一人一人の心も美しく、音楽に対しては純粋であるべき」と揺らぐことなくしっかりと語られました。

楽団創始者の1人であり、スタジオジブリの映画に出てくる村長のような存在感を持つ佐藤さんが「年に1回、ミューズの神に音楽を捧げるつもりでやっています」と少年のように少し照れ臭そうに話されたのが印象的でした。

団員は現在60人ほど。大所帯にもかかわらず長く存続し活動できるのは、コンサートの工夫や練習の参加のし易さなど、仕組みが上手に整えられていることだけでなく、皆で演奏することに深い愛情を持った理事長と一生懸命に演奏を楽しむ団員の情熱が最大の原動力になっていることが大きな要因だとわかりました。

 

※公益社団法人 日本オーケストラ連盟 オーケストラ実績一覧2015 http://www.orchestra.or.jp/results/uploads/78e4b72e9fbed23d8fcb6b2eecf02278b7a8b5a7.pdf

(取材・文責:安田 純)

活動のお知らせ

湘南フィルハーモニー管弦楽団のコンサートが2018年3月に開催されます。

第38回コンサート

◇日時 2018年3月11日(日)
◇時間 開場 12:45 / 開演 13:30
◇会場 藤沢市民会館
神奈川県藤沢市鵠沼東8番1号https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/c-hall/kyoiku/bunka/shisetsu/kaikan-gaiyo.html

◇指揮 清水 謙二 / バイオリン独奏 小野 唯
◇曲目

グリーグ/ 「ペール・ギュント」 組曲 第1番 作品46
シベリウス/ バイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
リムスキー・コルサコフ/ 「シェエラザード」 作品35  他

◇問い合わせ
http://shonanphil.web.fc2.com/toiawase.html

団体情報

認定NPO法人 湘南フィルハーモニー管弦楽団

住所:神奈川県茅ヶ崎市赤羽根337番地1
電話:080-5914-9649
Email:nposhonan@gmail.com
URL:http://shonanphil.web.fc2.com/index.html

安田 純(やすだ じゅん)プロフィール

平塚市生まれ、川崎市在住。これから少子高齢化していく日本にはNPOの活動が大きな役割を果たすと考え、その実態を知るためにNPOのレポーターとなる。趣味のランニングと仕事の合間を縫って取材活動に奔走しています。